新葉館出版Web川柳句会 2005年12月
 
『 歌 』 入選作品
選考/柏原幻四郎 
 
      




思いやり互いの十八番歌わない つまようじ

【寸評】 長いつき合いで、お互いのことをなんでも知っている。カラオケのうまくもない曲目のことも知っている。自分もその歌が歌い易いのだが、今日はやめておこう。ささやかな友情である。向こうも気をつかってくれている。




この歌を聴けばあの日がよみがえる 市川 勲

【寸評】 20年前、30年前、いや50年前のことでも、一曲の歌が思い出させてくれる。歌の持つ力である。中年のおっさん、おばさんがアカペラでなつかしい歌を歌って泣く。




喝采をうける音痴の十八番 齊藤 大柳

【寸評】 音痴の歌には妙な魅力がある。うまい人より心にしみる味がある。ひやかしでもなんでもなく、聞かせてほしい時がある。森繁節もオンチの魅力かもしれない。




妻ひとり歌ってくれる応援歌 雅彦
【寸評】 この句だけ、歌ではない。強く生きて行こうとする夫婦の姿を詠んでいる。味方には妻ひとり、四面楚歌である。負けてたまるか。頼むぜ、かあちゃん。





アカペラで校歌を歌うクラス会 朱雀門
カネだけが万能の世へ反戦歌 山木文人
カラオケでだんだん古い歌になる 見乗
横文字が多くて歌も歌えない しげを
歌は世につれて舌噛む英語入り 北朗
故里の校歌ながれる甲子園 鶴巻 弘
紅白は歌番組のはづだった 千田川
子を寝かすごとく老母に子守歌 悠澪
自宅ではポップス歌う演歌歌手 市川 勲
社歌やっと覚えた頃にひだりまえ 日比日踊
新曲はムリ軍歌なら唄えます 千草
同じ歌かけて喧嘩を売るつもり 伊塚紅白
同じ歌三十年も歌ってる 小さな光り
認知症歌を歌うと思い出す 上野楽生
反戦歌歌い続けた父が逝く 小西章雄
蛮声が邪魔にならない応援歌 菊池龍司
母さんに鼻歌のでる旅支度 岡部英夫
亡くなって本田美奈子を聴きました 炊飯器
露天風呂ひばりの演歌口ずさむ 千代子
六十年記憶の底にある軍歌 上野楽生