

川柳マガジンクラブ東京句会4月例会
4月8日(日)第68回が開催されました。
今回の参加者はお世話役の植竹団扇、松橋帆波さん他21名、欠席投句が6名、合計29名でした。川柳歴27年のベテラン、千葉・習志野の福島久子さん(ブログ筆者は以前NHK学園全国川柳大会大賞を受賞された「順調に老いていますとお医者様」を記憶)が初参加されました。
1、自由吟互選と句評会
句評会は出席者が3句ずつ選びますが、結果はゼロ票9句、一票7句、二票6句、三票2句、五票2句、六票3句、七票1句でした。
今回も、句評会の互選ゼロ票の句は掛け合いで論評しました。順風さんと桃葉さんが担当しました。
(1)ゼロ~三票の句より
ご懐妊嫁もパンダもまだ未定 千代子
順風「面白いことを題材にしたと思います」
桃葉「若い人が結婚するとまだかまだかと言いたくなるが、かわいそう。未定ということばがいいと思います」
こいし「私は次点として選びました。親の願望を表している句ですね」
疑問をつけた利江「嫁とパンダがわからなかった。嫁が来ないということでしょうか。主眼はどこにあるのでしょう」
帆波「嫁という表現は最近の芸能人などは自分の奥さんのことを言うが、この句は息子の嫁とニュースになったパンダのことでしょう。パンダのメスは可能性が三日しかなく、しかも出来たかどうかが大分後にならないとわからないそうです」
作者の千代子「わかりにくい句でどうもすみません。期待しますがわかるのに随分かかるそうですね。息子の嫁に聞きづらいことと重ねて詠みました」
老人ホーム死後発見の怖さ知る 順風
桃葉「近くにも老人ホームがあって覗くことがありますが、いじめなどもありそうで怖いです」
順風「最近のニュースのことですね。一週間くらい孤独死が気付かれなかったようです」
帆波「事件があったそのことですね。高いホームでは人が動いているかどうか感知するセンサーなども有るらしいですが。個人の生活を守ると言う面もあって難しい問題です」
作者は順風さん「そういうホームがあるのかとびっくりしました」
団扇「先ほどはしらっとコメントされてましたが、ご自分の句だったんですね」(笑い)
送別の花が萎れている始発 正
久子「良かったからとりました(笑い)。なにかドラマがありそうです。送別で花をもらったが、次への始発でもあると言うことでしょう」
句がよくわからないと言う声でがやがや。
作者の正「始発電車で寝ている娘さんの横に花束があった、という実景に出会って詠みました」
棺に蓋されて評定下される 倫也
三十六「(評定は)もう言い尽くされている。下されたあとはお酒になる。本人なら「もうほっといて欲しい」というところでしょう」
作者の倫也「他の句会で「勝負」の題で「判定」として出しました。死して後直ぐ忘れられる人といつまでも思われる人がいる、と言うことを詠みました」
エジソンのママの子ならば僕だって 六平太
以呂波「子供は親を選べないと言うから面白いと思いました」
団扇「私もそう読みました。生徒に「金八先生みたいになれ」と言われて「金八先生の生徒みたいになれ」と言い返したことがありました」
筆者含め一部の人はこの句が読み取れず「ああ、そういう意味だったんですねえ」
作者の六平太「エジソンの母は立派だった。自分の子供を信じることは大事です」
帆波さんから、エジソンは問題児と見なされ小学校をわずか3カ月で中退させられたが、息子の才能に気付いていた母は先生代わりになって勉強を教えながら、自宅で好きな発明に打ち込める環境を与えたことなどの説明していただいた。
ことんことん車窓に踊る缶ビール 游子
正「これは良い句。ゆったりした旅の感じが出ています」
久子「田園風景、旅の風景が浮かびます」
桃葉「何度か見たような風景が浮かびます」
欠席の作者游子さんのコメント「在来線のスピード感が心地よいです。新幹線は旅に向きません」
(2)言葉にかかわる話が出た句
今月は、辞書を引いてはじめてわかった言葉、使い方が引っかかる言葉などの句が多かったので取り上げて見ます。まず、そういう句ではありませんが言葉の句を挙げます。
川柳を知り日本語が面白い こいし
桃葉「面白いとは思うがあまりにも素直すぎる句です」
順風「楽屋吟のような気もします」
帆波「楽屋吟っぽいが、川柳を詠んだのだからまあよいかとは思います」
作者のこいし「単純のそのままを詠みました」
団扇「以前「日本語は噺家さんに教わった」というのを作ったことがあります」
宝くじ甘いロマンス追い続け 桃葉
桃葉「これ、私の句なんですが。私が追い続けています」(笑い)
順風「宝くじを甘いロマンスと表現したことが面白いです」
疑問を付けた睦悟朗「ロマンスは「恋物語」ですからちょっと引っかかりました」
団扇「ロマンの方が良いかな」
ミネルヴァの梟原発へ急げ 久子
「ミネルヴァ」は多くの参加者がわからなくて、投票前に辞書を引いたり、教え合ったりしていました。(注:ミネルヴァ=ローマ神話で、技術・職人の女神。ギリシャ神話のアテナと同一視され、アテナの権能が後に付加された。 ミネルヴァの梟=ミネルヴァの連れている梟。知恵の象徴。 筆者の余談:そう言えば、ラジオで毎日宣伝している債務整理・過払い金返還請求の弁護士法人・東京ミネルヴァ法律事務所のミネルヴァはこのことだったんですね)
利江「意味がわかってみるとなかなかしゃれた句だと思いました」
こいし「辞書を見て、面白いなと思いましたが、最初はわかりませんでした」
疑問を付けた品子「言葉がわからなかったです」
ブラボーの余韻が残る恋ごころ 栄子
順風「面白い句だと思います」
桃葉「余韻が残る・・・恋ごころ・・・良いなあと思いました」
帆波「ブラボーをこじゃれた使い方してますね。ブラボーはロシヤ語です。イタリヤ語でブラーヴォ(ラにアクセント)、フランス語でブラヴォ(ヴォにアクセント)などです。ブラボーと恋ごころのつながりがわかりにくいですね」
以呂波「恋ごころを鍵括弧書きにする手もありますね」
作者の栄子「実際にシャンソンを聞きに行って、みんながブラボーと叫ぶのを聞きました。それにシャンソンの「恋ごころ」も引っ掛けて詠みました」
で、参加者納得し、「ああ、越路吹雪さん、岸洋子さん、菅原洋一さん・・・などとがやがや」団扇さんが一節を歌いだしました。
医薬品なのに怪しいバイアグラ 帆波
順風「句自体も怪しいと思いました(笑い)。こういうの嫌いではありませんが」
桃葉「時事句だと思いました。今騒がれている・・・」??
作者の帆波「本当にそのままです。ファイザーが別の目的の薬を開発していて、副作用を発見して毛生え薬ともう一つに対する効用に興味を持ったのです。血流を良くするというところからの効用です。ですからファイザー製はれっきとした薬ですし、値下げ販売などしません。一方、偽物が出回っています」
三十六「催淫剤出はないということですよね。(血行を良くする薬なので)酒と一緒に飲んではいけないのですよね」
ブログ筆者を含め多く参加者には大変勉強になりました。
指揮棒がカイザル髭のように跳ね 芳夫
六票の高得点句です。
正「面白く、上手いこと作りました」
順風「シムケンがコントでやっていたような上手い表現です」
倫也「指揮棒の先がひょいと跳ねるのとは上手い見つけです」
利江、千代子、品子さんたちからも同様なコメントがありました。
作者の芳夫「高校生が先生の真似をしていたのを見ての発想です」
こいし「カイザルはカイゼルではないのですか」
声「カイザルでも良いのでは」
(注:髭が付くとドイツ皇帝ウィルヘルム二世のような髭を指すのでカイゼル(髭)のほうが一般的のようです。皇帝名Kaiser(ドイツ語の読みはカイゼル)は(日本語の習慣的な読みとして)カイザル、カイザーもありのようです)
モーツアルト聞きながら読むぞっき本 正美
七票の最高得点句です。
「ぞっき本」はほとんどの参加者がわからなかったようで、前出のミネルヴァ同様に、投票前に辞書を引いたり、教えあったりしました。そして意味がわかると面白い句だと感じた人が多数出ました。
しげる「モーツアルトとぞっき本との取り合わせが上手いと思いました」
こいし「ぞっき本は初めて知りました」
睦悟朗や朔太郎さんなどから同様なコメントがありましたが、ユニークなコメントもありました。、
芳夫「選ぶ人がいないかと思ったので犠牲的精神で一票入れましたら・・・」
六平太「ぞっき本の中味が問題。どんな本なんだろう」
久子さんから疑問も「モーツアルトとぞっき本が離れすぎているように思います」
作者の正美「犠牲的精神で選んでいただきありがとうございます(笑い)。先生との集いでいろんな勉強をする会で、こんなこともありました。なおぞっき本には江戸の春画の入ったものもありました」
帆波さんからぞっき本は新刊の本の売れ残ったものを定価を切って売るもので古書とは違うとの説明がありました。
団扇さんの締め「みんなに辞書を引かせて、トップになり良かったですね」
(3)本歌取りの句
笑う門なのに資産がない我が家 睦悟朗
ゆめか「おかしかったのでとりました」
以呂波「今の世の中で資産が無くても良いのではないですか」
倫也「疑問ではないのですが、もう一句を含めて本歌取りの句をどう扱うのかと思いまして」
帆波「本歌取りについては後でまたお話ししましょう」
作者「格言をひっくり返しにしてみました」
古池や蛙尋ねるシーベルト 品子
五票の高得点句です。
千代子「本歌取りでもリズムがよい。また重い問題を軽く詠んでいるのが良いと思いました」
和子「蛙だって考えちゃう」
正美「時事吟を芭蕉に重ねて軽く詠んでいるのがいい」
朔太郎「芭蕉から東北という連想もあります」
倫也「本歌取りをどう扱うか」
帆波「本歌は飛び込むなのにこの句は飛び込もうかどうしようかと考えている。そこが本歌取りでも完成度が高いところですね」
作者の品子「俳句を使って出すといろいろ言われるだろうとは思っていました」
帆波さんが資料を1枚用意して本歌取りの説明をしてくださいました。
☆古くは藤原定家が和歌についてまとめた本歌取りの原則がある。
☆言葉や表現が次第に固定化してしまうことからの脱出法としての意味もある。
☆あの句だと連想される世界と別の世界を表出し、重ねて鑑賞する一方大きく離れた世界をも鑑賞する。
☆単なる言葉の遊戯ではまずい。
(4)その他の高得点句
五票の句
エアコンも年寄りらしく高鼾 惟夕
正美、六平太、品子、倫也さんらから「わかりやすいが見付が面白い」と言う評価がありました。
六票の句
通帳という年金の仮の宿 朔太郎
倫也、以呂波、品子、順風、三十六、正美さんはじめ出席者は年金生活者が大多数なので、共感と「仮の宿」という見つけへの賞賛の声がありました。
帆波「自動的に引き落とされるのも含めて、仮の宿とは面白い表現です」
作者の朔太郎「最近直ぐに出て行くケースが多いので、それを仮の宿としました。年金でなにか出来ないかなあと思って作りました」
余生との境界線がぼやけ出す しげる
利江、六平太、栄子、桃葉、絵扇、正さんと睦悟朗のコメントが、①長生きになってきて、高齢者は幾つから、という境目がだんだん高い年齢に移行するし、ぼんやりしてきた、②高齢になって惚けが進んできた、の二つに分かれました。
作者のしげる「惚けとかあの世との境界線とかではありません。高齢者が増えてこれからが本番の人もたくさんいるし、いつから余生かと言う境目がぼやけていると言うことを詠みました」
2、宿題の課題吟
課題吟は「遠のく」小倉利江さんの選でした。
選者の弁「遠のくと普通に遠くなると混同したり、その辺が曖昧な句が多かったです。また遠のくから遠い句も外しました。ふるさとが多かった中で一句いただきました」
「秀」
母が逝き足が遠のく里帰り 栄子
付き合いを疎遠にしてる遠い耳 朔太郎
もう誰もお酌に来ない目が坐る 芳夫
行き違いあって気まずい仲となり 以呂波
幼少に別れた父は霧の中 絵扇
初恋が遠のいていく淡いまま ゆめか
墓だけの里想い出も風化する 桃葉
会う度に布教の友へ距離をおく 千代子
オフィスラブの夢が遠のくメタボ腹 正
人影が金の切れ目で遠くなる しげる
「五客」
ひとーつふたーつ麻酔が効いてきた こいし
引き潮に攫われて行く浮き袋 三十六
敗戦日昭和が遠くなって行く 三十六
わたしはカモメ地球だんだん遠くなる 久子
死神が去った心臓マッサージ 縁太
「三才」
俊寛のように見送る終電車 芳夫
発想に驚きの声が上がりました。
行かないでずっと行かない映画館 芳夫
すれ違い夫婦に橋が遠くなる 久子
軸 ゲーム機が活字離れを助長させ 利江
3、3分間吟
最後に、福島久子さん出題、選で3分間吟を行いました。課題は8日がお釈迦様の
生まれた日だからと「誕生」でした。
「佳作」
新しい言葉生まれるバラエティー 正
新しいスターを生んだ知事批判 正
誕生祝夫婦茶碗よ割れないで 桃葉
男子誕生女系家族に幟立て 桃葉
生まれたての孫ケイタイに乗ってくる 和子
僕の誕生きっと何かがある筈だ しげる
嬉しくも淋しくもあり誕生日 利江
お釈迦様忘れていたが駅で知る 栄子
誕生日鳴子こけしは知っている 三十六
私を生んだお方は誰ですか 倫也
少子化へ出来ちゃった児も祝われる 利江
近頃はめでたくもなし誕生日 睦悟朗
誕生日子等の電話がまだ来ない 睦悟朗
誕生日うっかり忘れ妻怒る 睦悟朗
選者「怒る妻 とすべきでしょう」
バースディケーキふっくら焼けました 千代子
佐渡の夢トキも必ず生まれます 千代子
蛙の子ごちゃごちゃと生まれてる 順風
「秀」
タケノコのように竜馬の名乗り合い 品子
留守の間にやたら生まれた金魚鉢 和子
宇宙誕生を見て来た綿飴機 芳夫
「特選」
満月のサンゴ誕生するルンバ 帆波
軸 星の誕生宇宙の神秘見つめられ 久子
次回の東京句会は5月13日(日)駒込学園にて開催です。
課題吟は「電波(表現自由)」三句詠です。
詳しくは、新葉館のホームページをご覧下さい。